一般社団法人 日本風力エネルギー学会

ホーム本学会について - 会長挨拶

日本風力エネルギー学会の更なる飛躍と再エネの主力電源化の実現に向けて


石原 孟(東京大学)

2018年5月28日、一般社団法人日本風力エネルギー学会の2018年度社員総会が無事に終了し、第5期の活動がスタートしました。会長就任にあたり御挨拶申し上げます。

本会では、過去2年間、様々な新しい取り組みが試みされました。業務委託から自前の業務管理等を行うとともに、新しい会計事務所を選定し、会計事務の効率化を図りました。また本会創設40周年を契機に種々な取り組みを通じて、学会活動の活性化を図ってきました。本会の更なる飛躍および再エネの主力電源化の実現に向けて、今後何をすべきかについて私の考えを述べたいと思います。


本会の更なる飛躍

本会の更なる飛躍のため、まず学術活動を拡充して参りたいと思います。学術活動としては、毎年開かれる風力エネルギー利用シンポジウム、見学会等に加え、昨年浮体式洋上風力発電研究に関する調査を受託し、理事および代表委員の皆様のご協力により、NEDOから初めての委託調査を実施しました。今後風力エネルギー利用に貢献できる横断なプロジェクトをさらに興していきたいと思います。

本会は、昨年創設40周年を迎えました。理事および代表委員の皆様のご協力により、40周年記念号(第123号)の発刊、風力発電の加速的な導入拡大に対する本会の役割を討議した座談会の開催、本会に対する意見・要望等の会員へのアンケート調査の実施、会員への記念バッジの配布等々、様々な行事を実施し、その結果を昨年の風力エネルギー利用シンポジウムにて発表しました。また、人材育成の観点からシンポジウムに英語セッションを設置するとともに、本会のPRを目的として第6回国際風力発電展にも出展しました。今年は昨年実施した座談会とアンケート調査の結果に基づき、人材育成・学会活動の活性化の見地から、シンポジウムの英語セッションの設置や国際風力発電展への出展等を継続するとともに、若手スクールの開設、研究会の立ち上げ等の新しい取り組みに挑戦していたいと思います。そのために、現在企画・運営委員会が中心に検討を始めています。さらにこれまで続いた「風力エネルギーハンドブック」の翻訳事業を完成させ、本の出版および講習会の開催を今年度中に実現していきいと思います。

会員サービスの向上としては、学会活動および風力関連の様々なイベントの情報をリアルタイムに会員の皆様に届ける仕組みを構築するとともに、学会ホームページにおける学会行事、イベントカレンダー、学会の沿革、書籍等を随時更新していきます。また過去の学会誌・論文集・シンポジウム予稿集を利用できるように、2017年の学会誌・論文集および第39回風力エネルギー利用シンポジウム予稿集をJ-STAGEに公開していきます。さらに会員サービス向上の新しい取り組みとして、国内外の風力エネルギーに係る技術とイベントの情報をまとめて、月に1回会員の皆様に配信するメールマガジンの発行を先月から開始しました。

学会活動の拡充および会員サービスの向上のためには、学会の事務体制と財務基盤の強化が不可欠です。そのため、学会専用事務所の開設および事務体制の強化を図り、学会における様々な活動を支えています。学会の財務基盤を強化するために、特別団体会員の増強が行われ、2015年新設当時の6社から今年8月現在の12社まで順調に増え、学会活動の活発化に貢献しています。今後、会員および特別団体会員の増員と学会の増収を図り、学会の財務基盤をさらに強化していきたいと思います。

再エネの主力電源化の実現に向けて

経済産業省は、今年4月10日に開かれた有識者会議において2050年に向けた長期エネルギー戦略の素案を示しました。ここでは、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」において長期目標としている2050年を視野に、「脱炭素化」のために、再生可能エネルギーは「経済的に自立した主力電源化を目指す」と明記されています。これを踏まえ、これまで以上に風力エネルギーの加速的な導入を図る必要があります。

世界の風力発電設備容量は2017末に5億3912万kW、新規導入量は5249万kW(前年比11%増)に達しました。一方、わが国における風力発電の設備容量は今年3月末350万kW、前年度より4%増えましたが、世界の設備容量の0.6%に留まっています。風力発電の認定設備容量は、固定価格買取制度(FIT)が導入されて以降、2017年3月末までに697万kWとなっています。また環境アセスメントの実施案件は2017年11月の時点で約1564万kWもあることから、計画中の風力発電設備が確実に建設されれば、大幅な導入拡大が期待されます。一方、認定の仕組みが「設備認定」から「事業計画認定」に変更され、今まで以上に風況等自然条件の事前調査や適切な保守点検・維持管理の実施が重要になるとともに、中長期的な価格目標としてFITからの自立化が求められています。 今後、風力発電の信頼性向上とコスト低減のために多くの技術開発が必要です。

再エネの主力電源化に関しては、欧州が先行しています。2017年にはEUにおける風力・太陽光・バイオマス等の再エネの総発電量が20.8%に達し,石炭火力の発電量の20.6%を超えました。再エネの導入が加速した理由の1つは,コストの削減です。国際再生可能エネルギー機関の発表によりますと,陸上風力発電のコストは,2010年からの7年間で8セントから6セントまで23%低減されました。今年7月23日にサウジアラビア政府の陸上風力発電の落札価格は2.4円/kWhであり、陸上風力発電の世界最安値を記録しました。

陸上風力発電だけではなく、洋上風力発電に関しても、2017年4月にデンマークの風力発電最大手のDONGエナジーウインドパワー(現在エルステッド)はドイツ政府の入札で、補助金ゼロで落札しました。今年の入札でも3月にオランダ、4月にドイツでそれぞれ洋上風力は補助金ゼロで落札され、政府からの補助金を得なくても、売電だけで洋上風力発電事業が成り立つ時代に突入しました。

本会においても、今後再エネの主力電源化の実現に向けた取り組みを検討し、風力発電の大量導入から風力発電の高度利用までの幅広い分野において貢献していきたいと思います。

新たな挑戦

再エネの主力電源化を実現するために、電力系統の効率的な利用および需給調整力の強化は、世界共通の課題になっています。わが国でも日本版コネクト&マネージが議論されています。今年6月17日から22日までパシフィコ横浜で開催されたグランド再生可能エネルギー 2018 国際会議の基調講演の中で指摘されたように、今後さまざまな再エネを組み合わせながら、全体で調和させ、地域全体をネットワークでつなぐとともに、揚水式発電や蓄電地等のエネルギー貯蔵設備を活用し、再エネの出力予測を含めたより柔軟な電力システムを構築する必要があります。近年、米国の蓄電技術の進展が目覚ましく、カリフォルニア州などの再エネ普及が進む州では、商業用・系統用の大型リチウムイオン電池が実用化されています。わが国におけても、洋上風力発電を利用した水素製造技術開発や風力発電の変動を水素で吸収する実証研究が実施されています。蓄電技術の更なるエネルギー効率向上や再エネの余剰電力の貯蔵方法としての水素の利用および低コスト化に向けた技術開発、さらに風力発電出力の予測や風力発電と太陽光発電のベストミックス等に関する研究開発は今後ますます重要になります。

わが国における風力発電の導入拡大には洋上風力発電は不可欠です。五島での浮体式洋上風力発電の実証事業および銚子・北九州での着床式洋上風力発電の実証研究は現在商業運転の段階に移っており、同海域における洋上ウィンドファームの開発が計画されています。今年3月9日に政府は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」を閣議決定し、秋の臨時国会で成立することを目指しています。これにより海域における長期利用が可能になり、洋上風力発電における事業リスクが大きく低減されます。2016年から実施された「日本型洋上風車の台湾における実証前調査」は日本型風力発電技術をアジアに広げていく契機になり、今年1月に日立製作所とベルギー社JDNと共同で台湾電力から21基からなるウィンドファームを受注しました。今後日本型風車をさらに世界に広げていくことを期待しています。

洋上風力発電だけではなく、陸上風力発電においても、わが国の自然環境条件に適した低風速型風車、高高度タワー、分割ブレードの技術開発が不可欠です。風車ロータ径を拡大しますと、風車の耐風性が低下し、またタワーを高くしますと、風車の耐震性が低下します。これらの問題を解決するために、新しい構造および高度な制御技術が必要となり、学会としても研究開発を通じて、風力発電設備の利用率および安全性の向上に貢献していきたいと思います。

風力発電の大量導入に向けて本学会が果たすべく役割は大きいです。風力発電は非常に学際的な分野であり、機械工学、建設工学、電気工学等の知識のみならず、気象学、環境学、経済学、金融工学等の知識も必要とされています。これらの分野の人材を有する学会は本学会の他にありません。今後本学会の強みを生かして、風力発電が直面している様々な技術的・社会的課題を解決し、わが国の風力発電の導入拡大に貢献していきたいと思います。会員の皆様のご協力とご支援をお願い申し上げます。

会長 石原 孟

ページの先頭へ